一級建築士独学diary 構造 ~鉄骨造(S造)鋼材~
今回は鋼材について勉強していきます。
鉄骨造は粘り強く(靭性がある)、大きなスパンの計画が可能であり、鉄筋コンクリート造と比べて軽量であるため、構造設計上は有利であるといえます。
ただし、柱や梁に使用する材は、鋼板を加工したり組み合わせたりすることで断面効率をあげ軽量化しているため、座屈しやすいという特徴があります。
そのため、鉄骨造を設計する上では座屈させないために、幅厚比や細長比、横補剛等の規定が設けれています。
幅厚比や細長比、横補剛についてはこちらに記載しています。
一級建築士独学diary 構造 ~鉄骨造(S造)幅厚比・細長比~ - 1級建築士になる日までdiary
一級建築士独学diary 構造 ~鉄骨造(S造)横補剛~ - 1級建築士になる日までdiary
また、鋼材は火に弱い、錆が発生してしまうという特徴があるので防火被覆、防錆処理についても注意が必要です。
鋼材には一般的に建築構造材として使用されている炭素鋼と、ステンレス等の合金鋼があります。炭素鋼は炭素含有量によって性質が異なります。炭素含有量が多いと強度は大きくなりますが靭性が減少します。その他リンや硫黄の含有量も靭性の減少に影響します。
柱や梁に使用する材は鋼を圧延して製作しています。圧延の読み方はそのまま”あつえん”です。最初人前で言うには自信なかったので心の中だけで”あつえん”と言ってましたが、今度から堂々と言えます。
圧延とは鋼板を製作する際、上ロールと下ロールの間に鋼を通して形をしていく方法です。圧延の強度には異方性があり、Z方向(板厚方向)が小さくなります。
圧延鋼材には3つの規格があります。
- SS材(一般圧延鋼材)
建築用として一般的にSS400材が使用されているが、溶接性は考慮されていない。 - SM材(溶接構造用圧延鋼材)
溶接割れを考慮し炭素量を減らして溶接作業に優れた鋼材。 - SN材(建築構造用圧延鋼材)
耐震性や溶接性に優れた建築鋼材。降伏点又は耐力の上限、下限、降伏比の上限が規定されている。降伏後の変形能力、溶接性が保証されている。
次に基準強度です。
基準強度は、降伏点の下限値と引張強さの70%のうち小さいほうの値です。
- SS材
SS400 厚40以下→235N/mm² 厚40超え→215N/mm²
〃 引張強さ→400~510N/mm²
SS490 厚40以下→275N/mm² 厚40超え→255N/mm²
〃 引張強さ→490~610N/mm² - SM材
SM400 厚40以下→235N/mm² 厚40超え→215N/mm²
〃 引張強さ→400~510N/mm²
SM490 厚40以下→325N/mm² 厚40超え→295N/mm²
〃 引張強さ→490~610N/mm² - SN材
SN400 厚40以下→235N/mm² 厚40超え→215N/mm²
〃 引張強さ→400~510N/mm²
SN490 厚40以下→325N/mm² 厚40超え→295N/mm²
〃 引張強さ→490~610N/mm²
以上からわかるようにSS400の”400”等の数値は引張強さの下限値を表しています。
さらにSN材には溶接性によりABC種に分かれます。
SN400はA,B,Cの3種類があり、SN490はB,Cの2種類があります。
- A種
溶接性・塑性変形能力を期待しない - B種
溶接性が良く、塑性変形能力を確保(降伏比の上限値を規定) - C種
B種に加え板厚方向の引張に対する性能を確保(降伏比の上限値を規定)
鋼材は強度に関わらずヤング係数は変わらず2.05×10^5N/㎟です。そのため強度をあげても変形は変わりません。
鉄骨は種類が多くて大変ですが、1つ1つ整理して覚えましょう。
それでは頑張り過ぎずボチボチやりましょう!
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